2015年10月13日(火)
絵画道場「私の中のカノジョたち / 松山彩実 展」会場にて
会期:2015年10月8日(木)〜10月27日(火)




展覧会会場にて松山彩実の作品を巡るディスカッションが行われました。

まず、本展の作家である松山彩実から自分の考えていることについての話が行われ、それを手がかりにディスカッションがおこなわれました。



 松山は女性の多い環境で育ってきたこともあり、社会の中で活躍する女性に興味が出てきたといいます。しかし、そのような女性像を強く望む反面、強くなっていった女性達は松山にとっては社会の中では可愛げのないマッチョな女性像として扱われてしまっているように感じてしまうようで、そのような理想と現実にさらされた女性像を自分の中で救い出す方法が制作に繋がるのだと言います。展覧会タイトルの「私の中のカノジョたち」はそのような動機からつけられています。
おそらく、松山の中の「カノジョたち」は、女性でありたいこと、女性としてみられること、女性であることなどが、理想と現実の間で複雑に絡み合い、自己からではなく自己の外側からアイデンティティを見出そうとした結果、その変化とともにアイデンティティを失ってしまったのではないでしょうか。そしてそれを取り戻すための行為として松山が作品を作っているようにも思えます。



 作品は松山が感じた弱者の立場である状態の女性たちが半獣半人としてトランスフォームした絵が飾られています。鯉やトンボ、樹木など様々なものと融合していく様は、松山が感じる女性像のズレを表しているいるように読み解くことができます。

ディスカッションでは、主に絵画に対して直接的なことを中心に話し合われました。

「背景との関係はこれでよいのか」「女性の表情は何を表しているのか」「構図はこれでただしかったのだろうか」「モチーフを記号として扱かっていて、そこでは絵画における描写という面はどうなっているのか。」「実際にこの絵をみて女性はどのように感じるのだろうか」

など、実際に作品についてディスカッションを行うことで、作家本人の持つ考えと作品がどのような関係で繋がれているかを確かめるようなディスカッションとなりました。



作家の考えていることは全て作品に影響を与えていると考えることはできますが、作品がそれを表現しているかはまた別の話であり、私たち作家はそれを表現するために作品に対して努力することが必要なのではないでしょうか。
また、学生の中でコンセプトなどを考えて悩んでいる学生をよく見かけますが、それは決して制作を規制するものではなく、その制約の中で自分が自由に制作するための方法ではないでしょうか。そんなことを考えさせられたディスカッションとなりました。

次回の絵画道場につきましては、また詳細が決まり次第アップさせていただきます。


(芸術学部油画領域 教務助手:寺岡海)


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15/11/24