遅くなりましたが、昨年冬に行われたディスカッションについてのレポートです。


2016年11月17日(木)
絵画道場シリーズ「絵画への意志」Vol.69
「木を見る心と人の象 / 西脇恵 展」会場にて

 

 展覧会会場にて西脇恵の作品を巡るディスカッションが行われました。まず本展の作家である西脇恵から自分の考えていることについての話が行われ、その後に質疑応答の時間となりました。



 西脇さんは「自然と人間の融合」や「生命感」をテーマに制作しています。

 今回の展覧会名「木を見る心と人の象(キをミるココロとヒトのカタチ)」は、「想像」の「想」を木・目・心に、「象」を人・象に分解し、名付けられています。

《門音》 油彩/キャンバス、455弌530弌2016年

 他にもこちらの作品《門音(モネ)》は「闇」の字が元になっています。タイトルに使用されている漢字の偏や旁の意味合いと、画面上に現れているイメージが結びついているようです。我が子のように愛着を持って制作している事が伺えます。
 
 そしてタイトルの付け方の話から、キャプションの在り方の話へ展開しました。西脇さんは自身が一鑑賞者であるとき、作品がキャプションによって制限されてしまう事が気になると言います。タイトルやステートメント、解説など、文章によって説明されすぎてしまう・・・絵そのものを見て想像したいのに・・・といった思いです。

 しかしながら自身が描き手である場合、自由に見てほしい反面、描かれた像に対して鑑賞者が抱く印象が暗い・怖いといったものであると複雑な気持になるようです。
 
 《マカミ》 油彩/キャンバス、1620弌1303弌2016年


 西脇さんの作品で特徴的なのは、細部まで緻密に描かれていることです。ディスカッション参加者からの意見で「西脇さんは部分を見る人なのではないか」、「全体のまとまりや調和ではなく、部分の増殖で成り立っているのではないか」という意見が出ました。西脇さんは、人の指のシワや爪など、そういった細部に目が行くのだと言います。

 《マカミ》部分


 「描く事」をしたい画家にとってちょうどいいモチーフは人それぞれ異なると思いますが、西脇さんにとってそれは樹木や女性の人体なのだと思いました。時に怖いと言われる事があっても、それはイメージに対する印象以外に、細部の描写の細かさに対する印象なのかもしれません。

 また、作風が異なっていても共通して具体的な何かが描かれている絵画である以上、これまでの絵画道場にも通ずるところがあり、作品に対する作者の自己の在処については一昨年6月の一井すみれさんを、作者の思い入れと鑑賞者が受け取る印象のズレについては昨年7月の柏木梨々華さんを想起しました。

 今回のディスカッションでは全体を通して、描かれたモチーフに対する印象や意味、作者の思い入れの話が主でしたが、それらはその時々に選んだ手段のようなものなのであって、一番大切なのは西脇さんの主観的な「感覚」や描画の過程に没入する事なのではないでしょうか。本展は西脇さんの主観・こだわり・フェチシズムが色濃く見える展覧会でした。

  




(文:油画研究室 教務助手・野中 梓)


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 その後絵画道場は2017年度の後期から再開しました。今年度からは四大油画2回生から1名、短大洋画の1・2回生から1名の、「2人展形式」で行われています。

Vol.70 津田紗那美×藤中里咲
Vol.71 丸内美祐×平井佳菜
Vol.71 阪田光里×四ツ谷ひかる

 …と進行し、それぞれのディスカッションは終了しましたが、「Vol.71 阪田光里×四ツ谷ひかる」の展示は現在も開催中です。みなさまのご来場を心よりお待ちしております。
17/12/14