絵画道場ディスカッションVol.63 「一井すみれの作品をめぐって」
2015年6月16日(火)


「一井すみれ展 / Curtain」会場にて、ディスカッションが行われました。

一井さんは「現代の日本人」をテーマに作品を制作しています。
作品はネットで拾った画像を背景に、実際のモデルをそこに描くという方法によって描かれています。登場する人物は皆一様に顔が隠れて(隠して)います。



そのような方法をとるのは、一井さんが感じる現代の日本人を表しています。前者は日常生活の中で、現実とネットの世界を並行して使用していることであり、後者はそのような状況がリアルな問題から目を逸らしているのではないかという考えからです。ある種、ネットが現実から逃避の為の道具として扱われていることの問題を危惧しているようにも思われます。

しかしそのような社会風刺のような考えとは裏腹に作品としてはユーモラスな雰囲気を持っており、そのバランスがおもしろいと私は思います。



また、作品は自己表現にならないようにしていると一井さんはいいます。
なぜなら個人的なことを表現してしまうと、それに共感する部分も個人的な事柄になってしまうからであり、作品の持つ関係の広がりを失ってしまうからだと思われます。

最後には「自分と作品との関係は?」という一井さんの質問に対してそれぞれの意見が話合われました。
作品制作の中で作品との距離の取り方というのは重要であるのかもしれませんが、改めてその関係を考えなおしてみると不思議に思います。その作者である以外の関係性とは一体どんなものなのでしょうか。

次回の展示はvol.64「冨永絢美 展 / warp!」(会期 :2015年7月2日(木)〜7月21日(火) )です。
みなさまのご来場を心よりお待ちしています。


15/07/01